日本作物学会紀事
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収量予測・情報処理・環境
FAO56モデルを用いた土壌の乾湿指標によるダイズ乾湿害の実態解析
今野 智寛高橋 智紀中野 恵子新良 力也大橋 優二工藤 忠之谷川 法聖森谷 真紀子南雲 芳文青木 政晴上原 敬義岡本 潔向井 吉崇中村 憲治大島 正稔加藤 知美森崎 耕平久野 智香子田畑 茂樹川原田 直也水谷 嘉之藤井 清孝蓮川 博之新谷 浩樹大塩 哲視山﨑 大貴伊藤 淳次道上 伸宏三原 美雪藤本 順子仲谷 敦志樋口 俊輔竹下 美保子持永 亮
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2020 年 89 巻 4 号 p. 337-345

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抄録

ダイズの低収要因は圃場ごとに異なるが,その低収要因の背景には,土壌水分の過湿,過乾燥が存在することが指摘されている.本研究では,FAO56モデルによって土壌水分を推定し,これをもとに土壌の乾湿害の両リスクを評価するために指標WI (Wet Index) を作成した.WIは0に近づくほど乾燥,1に近づくほど湿潤であることを示す指標とした.また,FAO56モデルの性質を考慮して,湿害のリスク評価には,各生育ステージにおいてモデルが仮定する最大水分 (WI=1) になる日数割合 (RWI) を採用した.これらの指標を用いて,2015年から2017年の3か年で全国16道県の現地農家圃場から収集した337データを解析したところ,どの生育ステージにおいてもWIの最小値は0.22以下,RWIの最大値は50%以上であったことから,地点や年次の違いによって,同じ生育ステージでも乾燥条件の地点もあれば,湿潤条件の地点もあることが示された.WI及びRWIと収量の関係を偏相関係数で評価すると,WIは栄養生長中期,子実肥大後期~成熟期に正の相関があり,RWIは栄養生長初期及び後期に負の相関,子実肥大後期に正の相関があった.以上の結果は既往の報告とよく一致し,我が国のダイズ作における乾湿害の実態をよく評価し,乾湿害のリスクが高い生育ステージを明らかにしたと考えられた.

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© 2020 日本作物学会
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