2021 年 90 巻 1 号 p. 83-91
早晩性の品種間差を利用した収穫期間の拡大を目指し,出穂時期の異なる極短穂型WCS用イネの同一収穫日における乾物収量と飼料成分を8月下旬から10月にかけて調査するとともに,穂ばらみ期の窒素追肥による粗タンパク質含有率の向上効果について検討した.乾物収量は,9月までは早生系統の「中国飼224号」(「つきはやか」として品種登録出願)と晩生品種の「つきすずか」の間に有意差は認められず,10月以降は「つきすずか」のほうが有意に高くなった.サイレージ発酵に重要な茎葉部単少糖含有率は,9月上旬までは「つきすずか」のほうが「中国飼224号」よりも有意に低かったが, 10月には両者に有意差は認められなくなった.可消化養分総量は,9月までは「中国飼224号」が,10月は「つきすずか」のほうが高いか同程度となった.粗タンパク質含有率では有意な品種間差が認められなかった.穂ばらみ期追肥はいずれの品種に対しても粗タンパク質含有率を増加させたが,乾物収量や他の成分には明確な影響を与えなかった.以上の結果から,早生系統「中国飼224号」と晩生品種「つきすずか」を併用する体系では,「つきすずか」単独では飼料品質が低く収穫に適さない8月下旬~9月の期間にも,高い品質のWCS用イネが収穫できると考えられた.また,穂ばらみ期の窒素追肥は粗タンパク質含有率を効率的に増加させ,飼料としての高付加価値化に貢献すると考えられた.