日本作物学会紀事
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総説
漏生イネ・雑草イネ防除における石灰窒素の効果の変動要因と活用技術
大平 陽一
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2021 年 90 巻 2 号 p. 117-124

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抄録

漏生イネ・雑草イネ対策として,水稲収穫後の休閑期における石灰窒素の圃場散布が有効であることが近年明らかになってきた.また,その効果は圃場管理条件,環境条件で大きく変動することも明確化されてきた.本報では,石灰窒素の効果の変動要因として,水稲の品種間差,稲わら残渣の有無,温度・石灰窒素の散布時季,土壌水分・降雨,耕起のタイミングを挙げた.石灰窒素の効果について,稲わらがあると半減する,適度な水分が必要,温度が高いほど効果が高まるなど,得られた知見を整理した.また,石灰窒素散布後に不耕起期間を設け,圃場表面で石灰窒素と水稲種子が2週間以上存在する必要がある一方,散布直後の耕起は漏生イネの発生抑制の効果が得られないなど,石灰窒素を活用する上での考え方と留意点を示した.石灰窒素による漏生イネ・雑草イネ防除の効果の程度を,古くから知見のある水稲移植栽培条件での有効除草剤による防除効果と比較した.その結果,有効除草剤による漏生イネ・雑草イネの防除価は90以上,石灰窒素では総じて80~90程度と推察された.石灰窒素は漏生イネ・雑草イネの防除効果のみならず窒素の肥効も持つことから,散布後に水稲を栽培する場合には減肥する必要があり,その減肥程度を整理した.これらの知見を踏まえて石灰窒素の活用における今後の課題についても論じた.

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