食用オオムギにおいて,精麦品質の面から重要となる胚乳の硝子率と,機能性が注目されている穀粒のβ–グルカン含有率について,現地農家圃場のデータから変動要因を解析するとともに,栃木県農業試験場において施肥法による両者の制御に関する試験を行った.まず,栃木県の農家圃場で生産されたシュンライを用いて変動要因を解析した.硝子率とβ–グルカン含有率は穀粒タンパク質含有率と高い相関関係にあることから,タンパク質含有率の制御が高品質生産の鍵になると考えられた.硝子率は年次変動がみられたが,タンパク質含有率8%以下であれば,硝子率許容値である50%以下となる可能性が高まり,そのときのβ–グルカン含有率は4.4%であった.しかし,減肥栽培による低タンパク質含有率化では,収量の変動が大きく,収量安定化と低硝子率の両立は困難であると考えられた.栃木県農業試験場内の試験では,茎立期30日前と茎立期の両時期に追肥する分施体系は,全量基肥栽培に比べてβ–グルカン含有率は低下するものの,収量が向上して硝子率が低下したことから,実用的な施肥方法であると考えられた.また,目標とするタンパク質含有率に収めるための追肥の可否を茎立期30日前の茎数×SPAD値により診断できる可能性が示唆された.β–グルカン含有率を高めるといわれる出穂期10日後の追肥は,硝子率が増加して品質が低下したことから,シュンライにおいては適切な技術ではないと考えられた.