日本作物学会紀事
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栽培
石川県における水稲多収品種の生産費が最小になる育苗箱当たり播種量および栽植密度
宇野 史生島田 雅博中村 弘和吉田 翔伍塚口 直史
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2021 年 90 巻 3 号 p. 252-260

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抄録

10 a当たりの育苗箱使用枚数を減らす技術として高密度播種苗の移植栽培や疎植栽培が開発されている.これら技術は,10 a当たりの生産費を低減できるが,育苗箱使用枚数の減少により減収するリスクがあり,収量当たりの生産費は必ずしも低下しない可能性がある.そこで,本研究では,水稲多収品種「石川65号」,「北陸193号」の移植栽培において,収量当たりの生産費が最小となる育苗箱当たり播種量と栽植密度を明らかにすることを目的とした.2016~2018年の3カ年にわたって,異なる播種量 (120~300 g) および栽植密度 (11.2~21.2株 m–2) を組み合わせて栽培し,生育,収量および収量構成要素について調査し,10 a当たりの育苗箱使用枚数および収量から生産費 (10 a当たりおよび玄米1 kg当たり) を算出した.10 a当たり生産費は播種量が多いほど,栽植密度が低いほど低減した.一方,収量には播種量による差は認められず,栽植密度が低いほど低くなった.玄米1 kg当たり生産費は「石川65号」,「北陸193号」共に,播種量300 gと栽植密度21.2株 m–2の組み合わせにおいて最小となり,この組み合わせにおける10 a当たりの育苗箱使用枚数は9.2~9.8箱であった.「石川65号」,「北陸193号」の収量は分げつ盛期のm2当たり茎数および生育指標 (草丈×m2当たり茎数×SPAD値) と高い正の相関関係を示し,栽植密度による初期の生育量の差がそのまま収量差となる可能性が示唆された.

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