日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
東北地域日本海側の多雪地域における融雪水を利用した水稲の無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培の苗立ちと生育,収量
白土 宏之伊藤 景子大平 陽一今須 宏美川名 義明
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2021 年 90 巻 4 号 p. 457-465

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抄録

水稲無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種栽培の播種早限の前進のために,春先に融雪水を用いて播種する栽培法の可能性を苗立ちや生育,収量の点から検討した.2014〜2017年に秋田県において,耐倒伏性の強い水稲品種「萌えみのり」を用いて,融雪水を利用して3月下旬〜4月上旬に乾燥種子を播種する融雪水区,4月下旬に催芽種子を播種する早期区,慣行の5月中旬に催芽種子を播種する普通期区を設けた.融雪水区は基肥窒素肥料に被覆尿素肥料のみを用いるとともに,2014年を除き総施肥窒素量を普通期区より増やした.また十分な苗立数を得るために,苗立数が多くても倒伏程度が軽い品種特性を活かして,播種量を早期区や普通期区以上の約9 g m–2とした.融雪水区の苗立率は早期区と同程度で普通期区よりやや低かったが,苗立数は他の2区より多い傾向であった.5月下旬の融雪水区の葉齢は早期区より0.3葉小さかったが,草丈や茎葉乾物重に差はなかった.融雪水区は普通期区と比べて,出穂期は4日,成熟期は5日早かった.融雪水区は普通期区に比べて,出穂期の乾物重は小さい傾向であり,窒素量は同程度であったが,成熟期の乾物重と窒素量は大きい傾向であった.融雪水区の精玄米重は795 g m–2で普通期区の756 g m–2と同等以上であった.以上,耐倒伏性品種と被覆尿素肥料を使用し,施肥窒素量と播種量を普通期区より増加させた条件では,融雪水播種でも普通期播種と同程度の苗立数と収量が得られ,雪融け直後まで播種早限を前進できる可能性が示された.

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