現在,鉄コーティング直播栽培が広く普及しているが,鉄コーティング種子の作成時にコーティング後の発熱によって種子の発芽率が低下する場合がある.これまで著者らは酸化鉄をコーティング資材として利用することによって発熱リスクを低減できることを報告してきた.また,近年,酸化鉄をベースとする鉄黒コート資材が開発されたことから,鉄黒コート種子のコーティング後の発熱,発芽および出芽苗立ち特性を調査した.鉄黒コート種子は鉄コーティング種子と異なり,コーティング後に明確な発熱が確認できなかったことから,催芽種子にもコーティング可能だと考えられた.また浸種(活性化)種子を利用した場合でも鉄黒コート種子の発芽は従来の鉄コーティング種子に比べて早く,圃場条件で機械播種した結果,「鉄黒コートと催芽種子」,「鉄黒コートと浸種(活性化)種子」,「従来鉄と浸種(活性化)種子」の組み合わせの順で苗立ちが優れる傾向を示した.