日本作物学会紀事
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栽培
長野県内の低暖地における水稲極多収品種「北陸193号」およびその後代系統に関する乾物生産・収量構成要素の特徴
細井 淳岡村 昌樹長田 健二小林 伸哉近藤 始彦小松 晃中込 弘二前田 英郎
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2022 年 91 巻 4 号 p. 315-321

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抄録

水稲極多収品種「北陸193号」およびこの品種の後代2系統を供試し,国内最多収地帯である長野県内の低暖地で3年間にわたり栽培試験を行った.それらの生育,乾物生産特性,収量および収量構成要素について比較検討した.生育良好な複数年次において,粗玄米収量約1200 g m–2を実証した時の収量形成に関する詳細が明らかとなった.新規2系統は栄養成長期間の短縮に伴い地上部全乾物重は小さく,穂揃期までに茎部に蓄積した非構造性炭水化物の含有量と登熟期の乾物増加の和で表される登熟期間に穂に供給可能な炭水化物の総量は少なくなる傾向にあった.「北陸193号」と比較した収量構成要素において,系統Aでは全籾数が多いが,精玄米千粒重が軽いため,両者の積で表されるシンク容量は同等かわずかに小さかった.登熟歩合も「北陸193号」より同等かわずかに低く,その結果,精玄米収量は少なかった.一方,系統Bでは全籾数は同等で,精玄米千粒重が重く,シンク容量が増加していたが,登熟歩合は低かった.その結果,系統Bは早生化により生育期間が短いにもかかわらず「北陸193号」と同等の収量を示し,登熟期の低温回避の観点から有望と判断された.

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© 2022 日本作物学会
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