前報では北陸地域の水稲品種「つきあかり」において,精玄米重750 g m–2 の収量限界を達成するためには籾数35.7千粒 m–2 を確保する重要性を示した.本報では北陸地域において,多収と良食味を両立可能な穂揃期における窒素栄養状態や,籾数35.7千粒 m–2 を達成するために必要な穂首分化期における生育量と穂肥窒素量との関係を検討した.籾数35.7千粒 m–2 を達成した場合,穂揃期における地上部窒素吸収量の理論値は13.4 g m–2,玄米タンパク質含有率との相関が有意である葉色(SPAD値)の理論値は41.9であった.穂首分化期では生育指標値「草丈 (cm)× 茎数(本 m–2)× SPAD値」 は地上部窒素吸収量などの諸形質と密接な正の相関関係があり,各形質の相互関係は回帰直線で表すことができた.穂首分化期における携帯型の正規化植生指数(NDVI)測定機によるNDVI値は0.26~0.75で,この範囲では生育指標値と密接な相関関係があることから,北陸地域の「つきあかり」栽培では,穂首分化期の生育量推定に携帯型NDVI測定機を利用できることが示された.同時に,携帯型NDVI測定機ではNDVI値が湛水深により大きく影響を受けるが,湛水深に応じてNDVI値を補正し,穂首分化期の生育量を推定できることを明らかにした.