日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
コムギ品種「さとのそら」における地上センシングにより測定した植生に関する指標と生育量の関係
板谷 恭兵大角 壮弘澤田 寛子水本 晃那福嶌 陽
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2022 年 91 巻 4 号 p. 356-364

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抄録

コムギ品種「さとのそら」の地上部乾物重や地上部窒素含量 (以下,窒素含量) を推定する指標として,携帯型作物生育センサーのGreenSeeker Handheld Crop SensorによるNDVI,分光器のカラーコンパスMFから算出したNDVI,GNDVI,SR,CIgreenおよびデジタルカメラを用いた植被率の6種類の植生指標の推定精度を比較した.これらの指標から分げつ期と茎立ち期の地上部乾物重および窒素含量の推定式を作成したところ,地上部乾物重の推定精度は植被率が最も高く,次いでGNDVIとCIgreenが高く,NDVIよりも優れていた.窒素含量についても,生育量が大きくなる茎立ち期において,NDVIよりも植被率,GNDVIおよびCIgreenの推定精度が高かった.このうち,CIgreenは茎立ち期でも値が頭打ちとならず,生育量の大きい時期の窒素含量の推定により適することが示唆された.一方,植生指標の生育に伴う推移をみたところ,植被率は調査期間を通して一貫して増加したのに対し,他の植生指標は生育の早い時期の土壌が乾燥した条件で値が低下する傾向がみられた.そのため,スペクトル情報を用いた指標については,土壌の乾湿条件等の測定環境に対する不安定さを改善できれば,より推定精度を高められると考えられた.

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© 2022 日本作物学会
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