イネの籾を加害する斑点米カメムシは,斑点米や不稔粒の発生によって玄米外観品質及び収量を低下させることから,日本のみならず世界的にも大きな問題となっている.日本では水稲作付面積に対するカメムシ発生面積率が1990年台半ば以降増加し続けており,2000年代初頭にはイネの主要害虫であるツマグロヨコバイ,ヒメトビウンカと肩を並べる発生面積となり,被害が深刻化している.被害を軽減する手法としては,その生息地となるイネ科雑草の管理技術,薬剤防除技術,斑点米を識別し物理的に除去する技術などがあるが,いずれの技術もコスト・労力がかかる.このため,斑点米カメムシに抵抗性を有する品種の育成が望まれているが,世界的にもこの抵抗性に関する育種的な研究は進んでいない.しかし,近年の研究で斑点米カメムシ抵抗性品種育成のための抵抗性母本の探索,選抜に必要な抵抗性検定法の開発および抵抗性機構の解析が進められており,世界で初めてとなる斑点米カメムシ抵抗性を持つ実用品種の育成が期待されている.本総説では,斑点米カメムシ抵抗性品種の育成の現状についてこれまで得られた知見を総合的に解説し,今後の展望を議論する.