日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
総説
葉のCO2同化速度の簡便迅速測定システムの開発
本田 爽太郎大久保 智司新家 寿建秋山 重之青木 直史田中 佑安達 俊輔
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 92 巻 4 号 p. 289-299

詳細
抄録

野外に生育する植物の葉のCO2同化速度を評価する方法は,専用のガス交換測定装置を持ち運び,測定対象葉を同化箱に挟んで数分間の待機を繰り返すことが一般的である.これには時間,労力,コストを要するため,1度の実験で測定できるサンプル数には限りがあった.そこで筆者らは,新型の赤外線ガス分析機構を搭載した新たなCO2同化速度測定装置MIC-100を開発した.閉鎖系測定装置であるMIC-100は,一般的に使用される開放系測定装置に比べて葉1枚あたりの測定時間を約1/7に短縮し,かつ強光条件下では開放系測定装置と同様の測定値を示した.さらに筆者らは,野外圃場で栽培したイネの光合成測定をより簡便化・迅速化するため,アシストスーツによる測定者の身体的負担の軽減策ならびに市販のドキュメントスキャナを利用した効率的な葉面積計測手法を考案した.これら一連の測定システムによって過去に例を見ない大規模な光合成測定実験が可能となり,イネ遺伝資源の多様性解析や多数のイネ系統の時系列解析などを実施できるようになった.MIC-100とその関連技術は,様々な植物の光合成研究や,作物の生育管理等へ活用されることが期待される.

著者関連情報
© 2023 日本作物学会
次の記事
feedback
Top