食糧用二条オオムギ (オオムギ) において,穂肥が省略できる省力施肥法を確立するために,適する肥効調節型肥料の解明と肥効調節型肥料を活用した分げつ時の追肥1回施用体系の検討を行った.窒素溶出期間が異なる二つの重窒素標識リニア型タイプを供試し,穂揃期および成熟期における二つのリニア型タイプ (LP) に由来するオオムギ植物体中の窒素含有量および施肥窒素利用率を明らかにした.穂揃期では,二つのLP肥料に由来する窒素含有量は,30日溶出タイプ (LP30) 由来が0.35 g m–2に対し,20日溶出タイプ (LP20) 由来は0.58 g m–2と有意に多く,施肥窒素利用率もLP20由来が有意に高かった.一方,成熟期では,窒素含有量と施肥窒素利用率に有意な差は認められなかった.穂揃期の含有窒素量の多少は収量に影響を与えることから,穂揃期において窒素含有量が多く,施肥窒素利用率の高かったLP20の方が,オオムギの省力施肥に適する肥効調節型肥料と判断された.次に,分げつ肥施用時にLP20を活用した追肥1回施用体系におけるオオムギの生育,収量,精麦適性を検討した.その結果,慣行分施区と比べて出穂期は同日で,成熟期は1日遅く,倒伏程度は同程度の軽微であった.収量は,千粒重の向上により5%優れた.子実タンパク質含有率は高かったが,精麦適性は同等であった.これらのことから,分げつ時の肥効調節型肥料LP20による追肥1回施用体系は,穂肥を省略できる省力施肥法であることが実証された.