日本作物学会紀事
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栽培
ダイズ晩生品種における収量の高温処理応答とその品種間差異
羽根 沙苗本間 香貴白岩 立彦
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キーワード: ダイズ, 高温, 収量, 品種間差
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2024 年 93 巻 3 号 p. 179-186

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抄録

気候温暖化により暖地におけるダイズ収量の低下が懸念されるが,晩生品種では生殖成長期間が遅れ,その期間に遭遇する気温が季節的に下がるために高温を回避でき,温度上昇の影響が小さくなる可能性がある.しかし,晩生品種においても温度上昇に対する収量の反応に品種間差が示唆されている.そこで,温暖地の主要品種である「フクユタカ」及び「丹波黒」を温度勾配温室内で栽培し,生育初期は外気温と同様,開花始期直前から子実肥大始期頃までに外気温追随型の温度勾配処理を施し,作物生理形質及び収量構成要素を調査した.処理期間中の平均気温は2014年は25.1~27.1℃,2015年は25.6~29.1℃であり,高温区と対照区で2014年は2.0℃,2015年は3.3℃の差を与えた.高温処理により収穫指数(HI)が低下し,その程度は「フクユタカ」よりも「丹波黒」で大きい傾向があった.HIの低下は,両品種ともに1莢粒数及び百粒重の低下と関連した.「丹波黒」においてのみ,高温処理により受精胚割合及び子実肥大始期から成熟期までの平均子実肥大速度が低下し,これが同品種のHI低下を大きくしていると考えられた.光合成速度 (Pn) は,高温処理期間終了後に高温区で低下した.以上より,ダイズ晩生品種では2~3℃の温度上昇によりHI及び光合成活性が低下すること,HIの低下程度に品種間差異が存在し,それは胚受精及び子実肥大が関係することが示唆された.

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