日本作物学会紀事
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ダイズ品種「里のほほえみ」種子の水分吸収及び子葉の状態変化の個体間差と出芽に対する影響
中尾 祥宏関山 恭代大野 智史
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キーワード: 吸水障害, 発芽, 出芽, 湿害, MRI
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2024 年 93 巻 3 号 p. 187-194

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抄録

播種後のダイズが土壌の高水分条件に遭遇すると過剰な水分吸収に伴い発芽,出芽,及び初期生育が不良となる吸水障害が発生する.また,短時間の吸水によって子葉の膨潤が十分に進行していなくても発芽や出芽は不良となることが知られているがそのメカニズムは十分に明らかでない.本研究では吸水障害のメカニズムを明らかにするために,種子の吸水量や水分局在,吸水種子の形態の個体間差を明らかにすることを目的とした.また,吸水の特徴が発芽及び出芽に及ぼす影響も調査した.ダイズ品種の「里のほほえみ」を供試し10分間から90分間冠水した後,冠水を解除し発芽,幼根の伸長,及び出芽率を調べた.冠水処理中は種子の外観,吸水量,及びMRI画像を確認した.その結果,冠水直後に外観から通常吸水種子と過剰吸水種子に分類できた.さらに過剰吸水種子を2枚の子葉の間の接合部の閉じている種子 (CL種子) と開いている種子 (OP種子) に分類できた.10分間の冠水処理によって通常吸水種子,CL種子,及びOP種子の播種後4日目の正常個体率はそれぞれ98.3%,66.7%,及び20.0%となり有意差が認められ,播種後6日目の出芽率はそれぞれ93.3%,53.3%,及び23.3%となった.したがって,同品種,同ロットの種子群において種子の吸水量及び吸水種子の形態に広い個体間差が認められ,2枚の子葉間への水の侵入の有無が発芽及び出芽に影響を及ぼすことが示唆された.

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