2025 年 94 巻 4 号 p. 355-364
生育診断とその結果をもとに窒素を可変的に追肥する施肥体系 (可変施肥) は,コムギの収量や品質を高い水準で安定させるために有効であるが,知見は限られている.本研究では,コムギの品質評価において重要な子実タンパク質含有率 (GPC) を止葉抽出期 (GS37) における窒素追肥量を増やすことによって高められるか2作期にわたって検証した.また,安価な生育診断手法としてGS37の群落画像から算出した生育診断指標値が利用可能かも検証した.GPCは,GS37の窒素追肥量を5 g m–2増やすことによって0.2~2.3ポイント有意に高まった.GPCが高まった原因は,5 g m–2の増肥によって子実の窒素蓄積量が約2 g m–2多くなったためであった.播種量や節間伸長開始期の窒素追肥量はGPCに影響しなかった.群落画像から算出した生育診断指標値はGS37の地上部窒素蓄積量と有意な相関があり,解析に供した38種類のうち6種類については2作期とも同一の傾きかつ切片を示した.3作期目には,生育診断指標値を基準としたGS37の可変施肥はGPCの高位安定化に有効であるか検証試験を行った.検証試験区では,節間伸長開始期に無作為量の窒素を追肥してGS37の地上部窒素蓄積量がばらつくようにした.その後,GS37の地上部窒素蓄積量を生育診断指標値で推定し,子実の窒素蓄積量9.43 g m–2を目標値として窒素を追肥した.その結果,収量は180~509 g m–2の範囲でばらついたが,GPCは11.6~11.8%とほぼ同値となった.群落画像から算出した生育診断指標値を基準としたGS37における窒素の可変施肥は「さぬきの夢2009」で品質の高位安定化を達成するために有効な栽培技術であると考えられた.