高知県における酒米品種「吟の夢」の1等米および高い蒸米酵素消化性を確保するための登熟期間平均気温を明らかにするために,作期移動試験を実施し,「吟の夢」における検査等級および蒸米酵素消化性と登熟期間の気温条件との関係や収量および蛋白質含有率の作期移動による変動を検討した.試験は,2016年では5月中旬,6月上旬,6月中旬,6月下旬に移植する4作期,2017,2018年では上記に7月中旬を加えた5作期を設けて行った.その結果,「吟の夢」において,作期を遅くすることにより登熟期間の平均気温が低くなれば,千粒重,整粒割合,心白発現率の増加や背白粒等の白未熟粒割合の減少によって検査等級が,デンプン特性の変化によって蒸米酵素消化性が向上することが認められた.そして,検査等級および蒸米酵素消化性と登熟期間の平均気温との相関関係における回帰式から,1等米および高い蒸米酵素消化性を確保するための登熟期間の平均気温は23.6℃以下であることを示すことができた.ただし,作期を遅くすることにより減収や蛋白質含有率の増加が認められたため,それらを緩和するための適正な栽培法を検討する必要がある.