近年,優良なパン用小麦品種が開発され国産小麦を使用したパンの製造販売も増加している.国産小麦を使用したパンは輸入小麦のパンよりおいしいという評価があるが,具体的な報告は極めて少ない.本研究は,小麦品種とパンの食味との関係を明らかにすることを目的に行った.北海道産小麦3品種「ゆめちから」「春よ恋」「キタノカオリ」の小麦粉各3製品と市販強力粉「カメリヤ」を供試してノータイム法でパンを製造し,クラム(パンの内相)中の各種糖含量,アミノ酸含量,有機酸含量,リン酸含量の測定および官能試験と味認識装置による呈味測定によりパンの食味を評価した.その結果,品種や小麦粉製品によってパンの食味に差があることが明らかになった.主成分分析により示された各品種の食味の特徴は以下の通りである.「ゆめちから」は3品種のなかで最も「カメリヤ」に類似しており,旨味と甘味に偏りが少なかった.「春よ恋」は遊離アミノ酸が多く旨味が強いと評価される傾向があったが,製品間でバラツキが大きかった.「キタノカオリ」はクラム中のマルトースが多く,クラムの甘味が強いと特徴づけられた.成分分析,味認識装置の結果は官能試験の結果に必ずしも一致せず,各分析方法には一長一短があることが示された.しかし,本研究で使用した味認識装置はパンの呈味の違いを数値化することができ,官能試験や成分分析と組み合わせることでより正確な食味の評価が可能になると考えられた.