水稲育苗箱全量基肥技術と水稲疎植栽培は共に育苗の省力・低コストを狙った栽培技術である.水稲疎植栽培では単位面積当たりに必要な育苗箱数は減るが,その一方で同時に水稲育苗箱全量基肥技術を用いると,育苗箱内の1箱当たりの施肥量を増やす必要性が生じる.1箱当たり施肥量の増加に伴い,苗の徒長が生じ,その苗を移植することによって移植後の活着不良,初期生育の遅れやそれに伴う穂数不足等による収量低下が発生する可能性が懸念されている.そこで,群馬県館林市の6月上・中旬移植で「あさひの夢」を供試して,水稲育苗箱専用肥料「苗箱まかせ」NK301-100を施用し,本田での栽植密度を疎植11.1株/m2,中間18.1株/m2,密植24.2株/m2の3段階に設定して栽培試験を実施した.それぞれ単位面積当たりに必要になる育苗箱数と減肥率から箱当たり施肥量を決定した.2010,2011年は減肥率50%として,2012年は減肥率40%として算出した施肥量分を育苗箱内に投入して育苗し,慣行区として化成肥料による分施方式の試験区も設定した.3か年にわたる本田試験の結果,1箱当たり施肥量が最も多かった疎植区では,既往の報告にみられる標準的な栽植密度との比較で株当たり茎数や穂数の増加傾向に対して,単位面積当たりでは茎数や穂数がやや劣る特徴があったものの,全籾数が確保されたことによって総じて中間や慣行区との収量・品質に遜色はなかった.群馬県を中心とした北関東の稲麦二毛作地域での6月上中旬移植の水稲作期でも疎植栽培と箱全量を組み合わせた栽培に実用上の問題点がないことが明らかになった.