殺菌剤であるチウラム水和剤(以下,チウラム)は,水稲初冬直播き栽培で出芽率を向上させることが報告されている.しかし,前年の冬から翌春の出芽までの長い越冬期間のうち,効果が発揮される温度環境や作用機構が不明である.本研究では,初冬直播きで播種から出芽までの間に種子が遭遇する2段階の温度条件でチウラムによる種子生存率への影響を評価した.積雪中を想定した–1℃条件ではチウラム無処理区(対照)で処理開始後の生存率が10日で8.9ポイントの速度で低下し,チウラムによる低下抑制の効果は認められなかった.一方,播種から積雪までの期間を想定した10℃条件では対照では10日で5.0ポイント低下したが,チウラムはその低下を有意に抑制し,チウラムにより種子内部への病原菌の侵入が抑制されることを確認した.以上,寒冷地の水稲初冬直播きにおいて,チウラムは10℃の条件では種子への病原菌の侵入を抑制することで種子の生存率を高めることが明らかとなった.