近年のコメ生産をめぐる環境が大きく変化する中,省力・低コスト化のニーズに応える生産技術が求められている.高密度播種は播種量の増加から育苗箱使用数が減少し,育苗箱全量基肥は接触施肥の特性から施肥基準と比べて10~40%減肥が可能である.これら二つの技術融合により経営改善効果に期待できるものの,健苗育成面から専用肥料の充填量は増加させざるを得ないところに技術的な課題が生じる.そこで,本研究では健苗育成と収量・品質の面から播種量と育苗箱全量基肥施肥による減肥率を検討した.専用肥料「苗箱まかせ」N400‐100と水稲品種「あさひの夢」を供試し,乾籾播種量を密苗250 gと標準160 gに設定し,20%減肥の密苗20区,40%減肥の密苗40区,充填なしの密苗培土区,慣行区を比較した.育苗完了時の密苗20区と密苗40区は草丈11.7~16.7 cmであった.また,苗1本あたりの地下部乾物重は苗充実度が低下しつつも,高密度播種による単位面積あたりの地下部乾物重の増加によりマット強度13~56 Nと概ね機械移植が可能な範囲であった.収量において密苗20区は密苗40区よりも有意に高く,穂数を高く維持して3~71 g m–2の増収となった.玄米タンパク質含有率と玄米アミロース含有率において密苗40区は密苗20区よりもそれぞれ0.1~0.3ポイント,0.1~0.4ポイント低かった.以上のことから,二つの技術融合は健苗育成が可能であり,収量では密苗20区,玄米成分品質では密苗40区が優れることが示された.