日本作物学会紀事
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水稲苗の素質に関する研究 (第3報)
太田 保夫山田 登
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1958 年 27 巻 1 号 p. 28-30

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抄録

水稲農林8号を水苗代及び畑苗代で育苗し, 7月1日ポットに移植し, その後30日間に亘つて第1図に示すごとき室温の硝子室内で生育せしめた. 畑苗の生育は低温区に於て特に水苗より勝り, 体内炭水化物含量について興味ある特長を示す (第4図). すなわち畑苗は澱粉及び全糖の含量が高く, 全炭水化物中でこれら成分の占める割合が高い. 水苗, 畑苗を問わず低温区では全炭水化物中で澱粉及び全糖の占める割合が高く, 温度によるこの差異は寒地と暖地に生育する水稲の炭水化物成分含量にちがいのあることを示している. 実験期間中に水稲体によつて吸収された二, 三無機成分の量を第1表に示すが, それによれば畑苗は水苗に較べて甚だ多量の吸収を行つている. もとより乾物重の増加が畑苗に於て著しく大であるから, このことは当然であると考えられるが, しかしマンガン, 窒素, 燐酸, 加里, 鉄は低温区に於て水苗に対する畑苗の乾物重の割合よりさらに著しく高い割合で吸収されており, 畑苗は低温下に於てこれら成分の吸収力が高いことを示している. 高温区では水苗に対する畑苗のこれら成分の吸収量の比率と, 乾物重の比率との間に大きな差異がないが, しかしこの場合にも加里及びマンガンの吸収量の比率は乾物重の比率より高く, 高温に於ても畑苗はこれら成分の吸収が水苗より高いことを示す. 畑苗のこの性質は寒地に於ける早植栽培に役立つているが, 初期生育の不良になり勝ちな湿田に於ても有効であろうと考えられる.

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