抄録
環境条件を完全に一定に保つた場合にもなお光合成に日変化が見られるかどうかを明らかにするために, 数種の牧草と麦類(オオムギ, ライムギ, イタリアンライグラス, オーチャードグラス, ラジノクローバーおよびコモンベッチ)の幼植物を用いて, 光の強さおよび温度を一定に保つて光合成の日変化を調べた. 小型ポットに土耕した30~50日の幼植物(20個体)を4万ルックスの電燈光の下で15℃に保つた同化室に入れ, 戸外空気を通じてBECKMANの赤外線ガス分析器により光合成の測定を行なつた. 結果は次の通りである. 1) このような条件の下でも光合成はある程度の日変化を示すことが, 調べたすべての作物で認められた. しかしその変化は空気中のCO2濃度変化と全く平行した. 2) この関係はライムギの場合には24時間以上, 昼夜の別なく成立つが, コモンベッチの場合には夜間はCO2濃度以外の同化抑制要因が同時に働くことが示された. 3) 以上のことから, 養水分が十分に与えられ, 光・温度およびCO2濃度一定の環境下では, これらの作物の光合成能力は, 夜間には多少の低下を示すものもあるが, 一般にはほとんど変化を示さないものと結論された.