抄録
麦類の春化誘導反応における核酸の役割を明らかにする目的で二つの実験を行った. 1. 核酸ピリミジン塩基ウラシルの代謝阻害物質である. 2-チオウラシルの高秋播性小麦の低温春化感応に及ぼす影響をしらべたところ, 2-チオウラシルは小麦の低温春化感応をいちじるしく阻害した. この阻害はウラシルによりかなりの程度まで, また, ヌクレオチドのウリジン燐酸やシチジン燐酸の前駆物質であるオロチン酸により完全に回復する. しかし, チミンでは回復は不十分であった. 2. 胚培養法を用い, 秋播性大麦の花成誘導に及ぼす, DNA, RNAの効果を非誘起状件下で調べたところ, 実験終了時までコントロール区は栄養状態でとどまったが, 核酸を加えたものの中で, とくにRNA 1および10ppm 区で出穂個体が多くみられ, 核酸が春化感応の代替作用を有することが認められた.