日本作物学会紀事
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組織培養におけるジャガイモのカルス形成におよぼすRNA合成阻害剤の作用について
岡沢 養三
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1969 年 38 巻 4 号 p. 622-626

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抄録
組織培養においてジャガイモのカルス形成は体内サイトカイニンと添加オーキシンによつて生ずる. オーキシン, サイトカイニンは新たなRNA合成を通じて細胞の生育をきたす. 本研究はRNAの構成塩基であるウラシルの類似物質で, RNA合成の阻害剤である2-チオウラシル (2-TU), および6-アザウラシル (6-AU) を10-4Mで培養基に添加すると, ジャガイモのカルス形成は完全に阻害された. この阻害はウラシルによつて回復されるが, オロチン酸, チミンではほとんど回復されなかつた. このことはカルス形成に新たなRNA合成が関与していることを示す. また27日間の培養で2-TUの効果は初期より12日ご処理まであらわれた. このうち最初の3日間の処理ではカルスの生重増加に対して刺激的効果がみられた. 培養組織のaging処理期間にRNase処理してもカイネチンが存在すればカルス生育の低下はみられなかつた. このことは培養組織中にすでに存在しているRNAがカルス形成に役立つのではなく, オーキシン, およびサイトカイニンによつて新たなRNA合成がおこり, これがカルス形成に働くものと考えられる.
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