日本作物学会紀事
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継代培養条件におけるイネ胚起源カルスの生長
前田 英三
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1971 年 40 巻 2 号 p. 141-149

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抄録
Te-Tep, 湖南仙, 短銀坊主の3品種をもちいて, 胚起源カルスを約600日間16ないし17世代にわたって継代培養した. Murashi9e-Skoog の基本培地にイースト抽出物 5g/1・2,4-D l0-5M・ショ糖30g/1・寒天9g/1 その他をくわえた培地をもちい, 30℃ 暗条件で培養した. 平均39日間ごとに継代培養をおこない, 新鮮培地にカルスを移植後4週間目に生体重を測定してカルスの生長量とした. この生長量を, 移植したときのカルスの生体重で除した値を, カルスの生長率とした. カルスが誘導されたときから, カルス片を移植するまでの日数(誘導後のage)が多くなるにつれて, Te-Tepの生長量は減少し, 短銀坊主では増加した. 湖南柚の生長量には, 著しい変化がなかった. 短銀坊主カルスの生長量が, 世代間に著しい変異を示したことが特長的である. Te-TeP カルスは継代培養をつづけるにつれて, その外部形態が誘導直後とは異なり, バラバラになりやすいカルスとなった. 移植量に対するカルスの生長量と生長率の関係を Te-TeP についでみると, 移植片が大きいほど, 生長量が増加するが生長率は減少した. 継代培養9世代目のカルスを FAA で固定しパラフイン切片を作成して, 組織学的変化を光学顕微鏡をもちいてしらべた. 湖南仙カルスで meristematic nodule の形成している状態と, 大きな液胞をもった細胞からなる柔組織中に, 分裂活性のあると思われる細胞集団を明瞭に観察することができた. Te-TePカルスでは, 細胞壁の肥厚した細胞からなる柔組織が多くみられ, このような構造が, Te-TePカルスの生長率の減少と関連があるものと推察された. 長期の継代培養でイネカルスの形態と生長率にみられる変化が, 器官形成能の減少と関連していることにふれ, またとくに短銀坊主カルスについて, ジベレリンによる生長反応および細胞核の大きさに関する変異などとの関係について考察した.
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