日本作物学会紀事
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ダイズの子実生産機構の生理学的研究 : 第3報 生育初期の肥料要素の欠如が体内成分と子実生産におよぼす影響
昆野 昭晨
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1971 年 40 巻 2 号 p. 150-160

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抄録
ダイズ農林2号を生育初期だけ各肥料要素の一つを除いた培養液で生育させ, その後完全肥料条件で栽培し, ダイズの子実生産に対する肥料要素の役割と, 体内成分, 生育, 子実生産の間の関係を検討し, つぎの結果をえた. 1) どの要素欠如でも, それぞれ欠乏症状があらわれ, N, P, Kの欠如で生育および子実生産が大きく阻害され, とくにN欠による阻害が大きかった. 2) 処理終了直後は欠如要素の含有率が低かったほかに, -Nでは低タンパク, 高デンプン, -Pでは低タンバク,-Kでは低炭水化物がみとめられ, NとPとはタンパク代謝に, Kは炭水化物代謝に影響したものと思われる. また, K, Ca, Mgの相補的な関係も各器官でみとめられた. 3) 処理終了後,植物を完全肥料条件に移すと, 体内成分えの処理影響は少なくなり, 処理による影響は一定の器官の大きさと数のうえに残った. 4) P欠乏の場合の症状と体内成分が, 土壌水分の不足状態で生育した場合のそれとよく似ており, ダイズのP欠乏と低水分土壌の悪影響との間に関係がありそうなことが示唆された. 5) Kは他の生育時期の欠如では生育に対する影響は少なかったが, この生育初期の試験では大きな影響がみとめられたので, Kはとくに生育初期に重要な要素であると云える. 6) 肥料要素を欠如させた植物にその欠如要素を葉面散布した場合. 多くの器官でその要素の含有率は高まったが, 絶対量は必ずしも多くなく, 水だけ散布した対照区でさえも生育に悪影響があっだので, 植物体が頻繁にねれた状態におかれることは生育にとって好ましくないものと思われる.
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