抄録
水稲, イタリアンライグラス, オーチャードグラスの葉のチトクロームオキシダーゼ活性を, 10~40℃ の温度で測定した. イタリアンライグラスおよびオーチャーグラスでは, 温度の上昇に従つて酵素活性が直線的に上昇したが, 水稲では, 20℃ 以下では温度上昇による活性増加率が小さかつた. 水稲のアスコルビン酸オキシダーゼおよびパーオキシダーゼは, 温度上昇に従つて酵素活性が直線的に上昇した. チトクロームオキシダーゼを可溶化する界面活性剤で処理すると, 上述の作物による差異はみとめられなくなつた. また, 界面活性剤処理によつて, チトクロームオキシダーゼの高温下での安定性が失われた. 以上のことから, 水稲とイタリアンライグラスまたはオーチャードグラスの間におけるチトクロームオキシダーゼの温度反応の差異は, これら作物間における脂質の性質の差異の影響を受けているものと推測した. 水稲およびトウモロコシの黄化幼植物から調製したミトコンドリアの酸化的リン酸化反応を測定した結果, 30℃以上の温度ではADP/Oの比が著しく低下し, 25℃以下でも低下する傾向があることがみとめられた.