日本作物学会紀事
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北方型および南方型作物葉の脂質の脂肪酸組成の差異について : 第2報 生育温度による脂肪酸組成の変動および種間差, 品種間差について
田島 公一
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1971 年 40 巻 3 号 p. 255-260

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抄録
前報にひきつづいて, 葉の脂質の脂肪酸組成を分析した結果, 作物の生育する温度によつて脂肪酸組成が顕著に変動することをみとめた. しかし, 少なくとも同一温度条件下で生育した場合は, 南方型作物は北方型作物にくらべて, 脂質, ことに phospholipid の(リノール酸+リノレン酸)/パルミチン酸, または不飽和酸/飽和酸の値が明らかに小さいことがみとめられた. 水稲品種間差については, 低温抵抗性の小さいインド型品種 T 136 と, 耐冷性品種染分とをくらべたところ, 30-20℃ で生育した場合は染分の方が不飽和酸/飽和酸の値が小さく, 17℃で生育した場合はほとんど差がないか, 染分の方がやや大きい傾向がみとめられた. 以上の結果から, 脂質, ことに Phospholipid の脂肪酸組成が, 温度に対する適応性の種間差になんらかの関係があるのではないかと考えられる. しかし, 品種間差のような僅少な差は, 脂質の脂肪酸組成の差異のみによつて決定されるものではないと考えられる.
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