日本作物学会紀事
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大豆の化学成分組成と栽培地の関係について : 第3報 ディスク電気泳動法によるタンパク質成分含量
平 春枝平 宏和
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1972 年 41 巻 2 号 p. 235-243

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抄録
大豆の30品種を石岡・塩尻および熊本の大豆育種試験地の圃場でそれぞれ栽培し, 得られた大豆について, そのタンパク質成分含量をディスク電気泳動法を用いて調べ, 各地域における生育特性 (開花まで, 登熟および成熟までの日数), 栽培環境 (開花まで, 登熟および成熟までの積算平均気温, 積算日照時間, 積算降水量), 一株粒重, 千粒重, 一般成分 (タンパク質・脂質・炭水化物・灰分) および無機成分 (カリ・リン・マグネシウム・カルシウム) 間の相関などについて検討を行なつた. 大豆タンパク質の電気泳動パターンA, B, C, D (11S) およびE (7S) 各成分の含量は, 3地域の平均値において, A: 4.24%, B: 7.64%, C: 15.37%, D: 35.18%およびE: 37.58%である. これらタンパク質各成分含量の品種間の変動は, A, C成分が大きく, D, E成分は小さい. また, これら各成分含量の地域的変動は認められない. 品種間におけるD成分の含量は, ヤマベ・サヨヒメ・出来過1号・ネマシラズ・白鳳などは高く, 白花埼1号・かたざや・生娘茨城1号などは低い. また, E成分の含量は, 金川早生・フジムスメ・農林1号・兄・しなのめじろ・タチスズナリ・ネマシラズ・小倉大豆などは高く, ヤマベ・コガネダイズ・茨城豆7号・アイサなどは低い. E/D値は3地域総合で最低値0.71から最高値1.41を示し, かたざや・白花埼1号は高い値を, ヤマベ・白鳳は低い値を示した. 各タンパク質成分含量に与える生育特性, 栽培環境などの要因との相関は, Aとの間に負の相関が石岡・塩尻において, Dとの間に正の相関が熊本において, Eとの間に負の相関が熊本においてそれぞれ認められた. これらタンパク質各成分含量と, 一般成分, 無機成分含量間の相関は, Aとカルシウムとの間に正の相関が石岡において, Dと脂質・カリとの間に負の相関が石岡において, Dとリンとの間に正の相関が熊本において, Eとタンパク質との間に正の相関が熊本において, Eとカリとの間に正の相関が塩尻において, Eとカルシウムとの間に正の相関が石岡において, Eと炭水化物との間に負の相関が塩尻・熊本において, それぞれ認められた. また, タンパク質成分含量間の相関は, AとBとの間に正の相関が熊本において, AとDとの間に負の相関が石岡・熊本および3地域総合において, AとEとの間に負の相関が塩尻において, BとEおよびCとDとの間にそれぞれ負の相関が石岡・塩尻・熊本および3地域総合において, また, DとEとの間に負の相関が熊本においてそれぞれ認められた.
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