大豆の30品種を石岡・塩尻および熊本の大豆育種試験地の圃場でそれぞれ栽培し, 得られた大豆について, カリ, リン, マグネシウムおよびカルシウムの含量をしらべた. これら種子の無機成分含量と, 各地域における生育特性 (開花まで, 登熟および成熟までの日数), 栽培環境 (開花まで, 登熟および成熟までの積算平均気温, 積算日照時間, 積算降水量), 一株粒重, 干粒重および一般成分 (タンパク質, 脂質, 炭水化物, 灰分) などとの関係について検討を加えた. これら栽培地を異にした大豆の無機成分含量の地域的変動は乾物中の含量において, カリは石岡, 塩尻, 熊本間に変動が認められないが, リン, マグネシウム, カルシウムは三地域間において変動が認められた. 一方, これら無機成分の灰分中の含量においては, カリ, リン, マグネシウム, カルシウムにおいて地域的変動が認められた. これら無機成分含量の品種間の変動は, 乾物中および灰分中のカルシウムの変動が, カリ, リン, マグネシウムの変動に比べて大きいことが認められた. これら無機成分含量の変動におよぼす生育特性・栽培環境との相関は, 石岡, 塩尻および3地域総合において同じ傾向を示した. すなわち, 乾物中の含量においてはカリとの間には相関が認められないが, リン, マグネシウム, カルシウムとの間に負の相関が認められた. 一方, 灰分中の含量においては, カリが前記条件との間に正の, リン, カルシウムにおいて負の相関が認められた. なお, マグネシウムにおいては, これら上記諸要因との間に全く相関が認められなかつた. また, これら上記の諸相関は, 熊本においては異なつた傾向が認められた. 一般成分含量と無機成分含量間の相関は, 石岡, 塩尻, 熊本および3地域総合においてほとんど同じ傾向が認められた. すなわち, カリが炭水化物との間に負の, 灰分のと間に正の相関が認められ, リン, マグネシウムにおいては, タンパク質, 灰分との間に正の相関が, 脂質, 炭水化物との間に負の相関が認められた. また, カルシウムにおいては, タンパク質, 灰分との間に正の, 炭水化物との間に負の相関が認められた. また, 無機成分含量間の相関では, カリがリンとの間に正の, カルシウムとの間に負の, リンがマグネシウム, カルシウムとの間に正の, マグネシウムがカルシウムとの間に正の各相関が認められた. 一方, 灰分中の各無機成分含量と一般成分含量との間の相関は, カリにおいてはタンパク質, 灰分との間に負の, 脂質, 炭水化物との間に正の, リンにおいては, タンパク質, 灰分との間に正の, 脂質, 炭水化物との間に負の相関がそれぞれ認められた. また, マグネシウムにおいては, タンパク質との間に正の, 脂質, 炭水化物, 灰分との間に負の, カルシウムにおいては, 灰分, 脂質との間に正の, 炭水化物との間に負の相関がそれぞれ認められた. また, 灰分中各無機成分含量間の相関においては, カリはリン, マグネシウム, カルシウムとの間に負の, リンはマグネシウム, カルシウムとの間に正の各相関が認められた.
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