日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-3
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シンポジウム13 オルガネラトキシコロジー
NRF2依存性環境ストレス応答:内耳酸化ストレス障害の軽減に対するNRF2の貢献
本蔵 陽平松尾 洋孝村上 昌平崎山 真幸水足 邦雄塩谷 彰浩山本 雅之森田 一郎四ノ宮 成祥川瀬 哲明香取 幸夫*本橋 ほづみ
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抄録
転写因子NRF2は酸化ストレスによる組織障害からの防御機構を担う重要な制御因子である。最近の報告から、強大音曝露によってもたらされる内耳性聴覚障害は、虚血再還流による酸化ストレスの増加がもたらす組織障害であることが明らかにされた。すなわち、強大音に曝露されている間は内耳の血流量が減少し、曝露後にその回復が起こることにより、活性酸素種が発生し組織障害・細胞機能の低下が生じる。我々は、NRF2の活性化が、心臓や脳、腎臓などの臓器における虚血再灌流障害の軽減に有効であると報告されていることから、強大音曝露による内耳障害の軽減にも有効であると予想し、その検証を行った。その結果、Nrf2–/–マウスは野生型マウスと比較して強大音曝露により内耳障害が生じ易いことが明らかになった。そこで、NRF2誘導剤であるCDDO-Imを強大音曝露前に投与したところ、内耳障害が軽減された。この改善効果はNrf2–/–マウスでは認められなかったことから、CDDO-Imによる内耳保護作用はNRF2の活性化によるものであることが確認された。ヒトにおいては、NRF2遺伝子プロモーター領域に一塩基多型があり、NRF2の発現量とその活性の程度に影響することが知られている。そこで、健康診断を受検した602人の陸上自衛隊員の聴力検査の結果とNRF2遺伝子の一塩基多型の相関を検討したところ、騒音性難聴の初期症状を示す集団で、NRF2が少なめになる一塩基多型を有する頻度が有意に高いことがわかった。以上のことより、NRF2の活性化が騒音性難聴の予防に重要であると結論される。また、NRF2遺伝子の発現が低い一塩基多型を有する場合は、騒音性難聴に対するリスクが高くなるので強大音の曝露に対して注意が必要といえる。
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© 2016 日本毒性学会
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