日本作物学会紀事
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作物の分枝性に関する研究 : 第8報 異なる照度および温度条件下における水稲品種の分げつ性の差異について
花田 毅一
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1974 年 43 巻 1 号 p. 88-98

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抄録
穂数型水稲品種金南風および秋晴, 穂重型品種黄金錦および農林22号を屋外自然条件下で, また金南風および黄金錦を人工気象室内で気温および照度を変えた条件下で栽培し, 分げつの生長および出現を調べた. 1) 分げつ数の比較は主茎の葉令を基準として行なつた. 両型品種とも低温強光(20℃, 47,000lux)下および屋外自然条件下で分げつ数が多く, 高温弱光(30℃, 15,000lux)下で最も少なかつた. 分げつの次位別にみると, 環境条件の良い場合は1次分げつの数の品種間差異は少なく, 総分げつ数の差はほとんど2次, 3次分げつの差に基づくが, 不良条件下では1次分げつにも品種間差異が顕著であつた. この結果から, 環境がはなはだ良い場合は, 穂数型, 穂重型ともに分げつがよく発育して差が現われ難く, 不良となるにつれて, 分げつ数が減少するとともに差が現われ, また1次分げつよりも2次, 3次の高次分げつに差が現われ易いと考え, 模式図による説明を加えた. 2) 1次および2次分げつの葉令 "y" のそれぞれの母茎の葉令 "x" に対する回帰は完全に直線になり, その回帰係数は多くが1と1.1の間にあつた. 回帰係数ならびに分げつの葉令が1.0になる時期(ほぼその分げつの出現期に等しい)の母茎の葉令にも多くの場合品種間差異がみられなかつた. 3) 母茎の各節からの1次分げつあるいは2次分げつの出現率について, 低節位および高節位分げつに顕著な品種間差異ならびに環境条件による差異がみられた. 中間節位の分げつでは穂重型の黄金錦でも, また不良環境下でも100%近い出現率を示した. 4) 上記の結果から, 分げつ数の品種間差異はもつぱら低節位および高節位からの分げつの出現率の差によつて起る, 換言すればこれらの節位に分化した分げつ芽が発育するか否かにかかつているとみられる. 本実験を行なうに当り, 種子の分譲を頂いた農林省農事試験場, 広島, 愛知両県農業試験場(当時)に謝意を表する. また, 西川五郎教授から有益なご助言を頂き, 伊藤雅敏, 岸仁一両氏ほか諸氏の熱心な助力を頂いた. ここに記して謝意を表する.
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