日本作物学会紀事
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桑の光合成および光合成産物の転流消費に関する研究 : 第3報 葉令を異にする葉に同化された14C-光合成産物の転流について
佐藤 光政
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1974 年 43 巻 1 号 p. 99-104

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抄録
ポット植えの桑幼木の単葉または全茎葉にビニール製の袋をかぶせ, この袋内に14CO2を循環させる装置を作製し, 照度35,000ルックス以上, 温度25~35℃の条件下で14CO2をとりこませ, 標識された光合成産物の桑樹体内における転流・分配について調査をおこなつた. 得られた結果の大要は次のとおりである. 1. 単葉からとりこませた場合, 14C-光合成産物の大部分は3~4日以内に同化葉から転流したが, 14C-光合成産物の20~30%は同化葉に残留した. 14C-光合成産物は条, 株, 根などの器官へは転流したが, 成熟葉への転流はほとんどみられなかつた. 2. 葉令の若し、上位葉からとりこませた場合には先端部のごく若い茎葉への分配率が比較的高く, 葉令のすすんだ下位葉からは株や根への分配率が高かつた. 3. 茎葉全体からとりこませ, 同化直後における各葉位の葉の比放射能をみると, 葉令の若い上位葉では低く, 中位葉で高く, さらに葉令のすすんだ下位葉でふたたび低くなる傾向があり, この傾向は赤外線ガス分析計などで測定した光合成能力の葉位別の変化の傾向とよく一致していた. また植付け後の日数の短い桑ほど14C-光合成産物を同化葉に保持し, 植付け後の日数の増加にともなつて株や根への分配率が高くなる傾向が示された.
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