抄録
この試験は, ばれいしよ44品種, 19年間の試験成績を用いて, 上いも数, 一個重およびでんぷん価形質について, Finlay and Wilkinson (1963)の提唱した回帰係数, および年次平均値を求め, 個々の品種の年次安定性を推定するとともに, 各品種の年次安定性を4つのタイプとその他に分類することを試みた. さらに, 年次安定性に影響を及ぼすと思われる疫病罹病率について検討を加えた. 1. 上いも数, 一個重およびでんぷん価について, 品種ごとの回帰直線の分散分析の結果, 年次安定性に品種間差異がみられた. 2. 上いも数, 一個重およびでんぷん価について, 年次安定性を示す品種, 多い値で平均安定性を示す品種, 少い値で平均安定性を示す品種および年次不安定性を示す品種などに分類し得た. 3. 上いも数についての品種の年次安定性は, 一個重と有意な負の相関関係を示した. また, 一個重についての品種の年次安定性は, 上いも数およびでんぷん価と有意な負の相関関係を示したが, 一個重とは有意な正の相関関係を示した. しかし, でんぷん価についての品種の年次安定性は, これら3形質との間に有意な相関関係が認められなかつた. 4. 上いも数およびでんぷん価についての品種の年次安定性は, 疫病罹病率との間に有意な負の相関関係を示し, 疫病罹病率の増大は年次不安定となる傾向を認めた.