抄録
小胞子初期ころに冷温処理をおこなったイネの葯を電子顕微鏡観察のために固定, 染色した。この材料で, 葯腔中にタペート性の物質が浮遊しているのがしばしば観察された。この浮遊物には分散状, 集合状および凝集状の3型がみられた。分散状浮遊物は主として膨潤的タペート肥大(丘, 炎, 風船状の各型をふくむ)から, 凝集状浮遊物は主として収縮的風船状肥大から, そして集合状浮遊物はいくつかの径路から由来していた。これら浮遊物の生因は3型のいずれも肥大タペート細胞の細胞膜の破裂あるいは退化によるものであり, その冷温不稔にたいする影響もタペート肥大と基本的に同じものであるとみられる。