日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
ミシマサイコ種子の発芽に関する研究
第3報 ミシマサイコ種子の休眠特性
桃木 芳枝太田 保夫長谷川 忠男田辺 猛川谷 豊彦鈴木 隆雄金木 良三
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 47 巻 1 号 p. 25-30

詳細
抄録
ミシマサイコ休眠種子の休眠特性を生理代謝を中心に検討し, つぎのような結果を得た.
1. 休眠種子の吸水速度は非休眠種子に比べ30℃ではほとんど差異がなく, 15℃では非休眠種子よりやや速かった. したがってミシマサイコ種子の休眠は種皮の硬実などで起こる吸水阻害が制限要因でないことが示唆された.
2. 休眠乾燥種子の酸素吸収は非休眠乾燥種子に比べむしろ高く, 呼吸商は低かった. このことからミシマサイコ休眠種子には酸素収奪機構の存在が示唆され, そのため種子内の酸素分圧の低下をきたし発芽が抑えられるものと考えられた. 一方, 発芽種子の呼吸量は不発芽種子に比べて著しく高まることが認められた. しかし不発芽種子の呼吸商は発芽種子より低く, 休眠種子の呼吸商が低いことと傾向が一致していた.
3. 非休眠種子のエチルアルコール生成量は低酸素分圧下では休眠種子より高く, 高酸素分圧下では逆に低下した. このことから非休眠種子は嫌気的条件では無気呼吸が盛んに行なわれ, 好気的条件では無気呼吸が抑えられ外界の条件に活発に反応していることが推定された.
4. 水中に浸漬した休眠種子は非休眠種子に比べて水中溶存酸素の収奪が著しかった.
5. 休眠種子は過酸化水素処理により発芽が促進され, 0.3%過酸化水素処理区に最も発芽促進効果が認められた. また過酸化水素処理区の呼吸量は対照区 (蒸留水処理) より著しく高まり, 発芽種子の呼吸量と同様な傾向を示した.
著者関連情報
© 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top