日本作物学会紀事
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水稲の植傷みに関する研究
第1報 移植後の初期生育に及ぼす苗の剪根程度の影響
山本 由徳前田 和美林 喜三郎
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1978 年 47 巻 1 号 p. 31-38

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抄録
水稲苗 (成苗) に5段階の剪根処理 (第1表) を施し, 移植時の苗の断根が, 初期生育に及ぼす影響について検討した.
1. 無剪根区, 5cm区および3cm区では, 移植直後に葉の萎凋は全く起らなかったが, して, これらの区では, 移植後3日目頃より新根の発生に伴って葉身の萎凋は回復したが, その一部は枯死した.
2. 5cm区では地上部および根の生育ともに, また, 3cm区においては移植後1~2週間の葉面積, 乾物重を除き, 無剪根区との間に有意差は認められなかった. さらに, 5cm区と3cm区との間には, 地上部および根の生育ともに有意差は認められず, 両区の移植後4週間日の草丈, 根数, 乾物重などは無剪根区を凌駕した.
3. 全根剪除区では, 地上部および根の生育ともに他のどの区よりも有意に劣ったが, 地上部では, とくに葉面積および乾物重が, 根においては乾物重が最も著しい影響をうけた, また, 1cm区は, 無剪根区と全根剪除区の中間的な生育を示した.
4. 根への乾物分配率は, 各区とも移植後1週間目に最も高くなったが, その割合は剪根程度の強い区ほど著しかった. しかし, 活着後は, 各区とも根への分配率は低下し, さらに処理による明瞭な差異はみられなくなった.
5. 全乾物重に対する各器官の乾物重割合, およびT/R比は活着後の生育に伴って処理区間の差は次第に小さくなった.
6. 以上の結果より, 移植時の苗に3cm以上根が残存していれば, 剪根に伴う植傷みは生じないものと推定した.
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