日本作物学会紀事
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印度型イネの開花期高温処理による不稔
佐竹 徹夫吉田 昌一
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1978 年 47 巻 1 号 p. 6-17

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抄録
耐熱性の異なる印度型イネ3品種をポット栽培し, 開花期にファイトトロン自然光室で高温処理して不稔を誘導した. 頴花の開花日別および開花時刻別の不稔歩合から高温感受性期を, 高温処理されためしべの受精能力と柱頭上花粉の観察から不稔の原因を, 稔実歩合の温度反応曲線から不稔誘起の限界温度を推定した.
高温感受性の最も高い時期は開花期である. 不稔は開花当日の高温のみによって誘起され, 開花日の前後それぞれ5日間の高温によっては誘起されなかった. 高温感受性の最も高い頴花は開花中の頴花であり, これについで開花直前の頴花が感受性であった. 開花開始より1時間以上経過した頴花にはほとんど感受性がみられず, 強度の高温処理をうけても不稔を発生しない. めしべの受精力はほとんど高温障害をうけておらず, 不稔の主因は柱頭上の受粉不良と花粉発芽不良に基く不受精である.
8時間処理で20%の不稔を誘起する限界温度は, 耐熱性強の品種N22で36.5℃, 耐熱性弱の品種BKN6624で32℃で品種間に顕著な差がみられたが, 41℃ではどの品種も100%不稔となった. 38℃処理で20%の不稔を誘起する限界時間は, N22の4時間にたいしてBKN6624は2時間で明瞭な品種間差がみられたが, 41℃2時間処理ではどの品種も90%以上が不稔で品種の耐熱性の差は明らかでなかった. 開頴後, 薬がまだ頴花の中にある時期に裂開して確実に受粉する特性, および早朝に開花して障害高温を回避する特性は, 耐熱性品種の重要な特性として注目された.
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