日本作物学会紀事
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トウモロコシの多穂性に関する生理・生態学的研究 : 第3報 2段目雌穂の発現と生理・生態的諸特性との関係
中世古 公男後藤 寛治佐藤 肇
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1978 年 47 巻 2 号 p. 212-220

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抄録
多穂型トウモロコシにおける2段目雌穂の発現と生理・生態的諸特性との関係を明らかにするため, 多穂型一代雑種4系統およびホクユウを供試し, 2段階の密度条件(疎植-2,560個体/10a, 密植-5,050 個体/10a, 1973年度)ならびに慣行栽植条件(4,444 個体/10a, 1974年度)下に栽培し, 絹糸抽出期における諸特性と収量構成要素との関係について検討し, 次のような結果を得た。1. 単位面積当の子実収量は, 密植条件下では2段目雌穂の着生頻度と, 慣行栽植条件下では2段目雌穂の平均子実重と強い正の相関を示した(第1図)。2. 栽植密度の増加に伴う各器官の乾物重, 葉面積および収量構成要素(いずれも個体当)の減少率についてみると, 絹糸抽出期においては2段目雌穂乾物重, 収穫期においては2段目雌穂の着生頻度における減少程度が最も大きかった(第2図)。3. ホクユウを除く4系統の間では, 密植および慣行栽植条件下で最も多収を示した系統は, 絹糸抽出期における着雌穂数, 2段目雌穂乾物重およびR/L比(葉面積に対する根の乾物重の比)が最も高く, 葉身乾物重および葉面積は最も小さかった。また, 最も低収であった系統はこれと全く逆の特性を示した(第1, 2, 3, 5表)。4. 個体当子実収量は, 疎植条件下では絹糸抽出期における各器官の乾物重, 葉面積, R/L比のいずれとも有意な相関を示さなかったが, 密植条件下では, 着雌穂数, 2段目雌穂乾物重およびR/L比との間に5%で有意な正の相関が認められた。2段目雌穂の平均子実重は葉身乾物重および葉面積と強い負の相関を示し, 着生頻度は密植条件下で葉身乾物重および葉面積を除く各要素と正の相関を示した。また, 密植条件下で得られた関係は, 慣行栽植条件下でもほぼ同様に認められた(第3図, 第6表)。5. 収量構成要素と葉面積およびR/L比との関係を各密度条件を込みにして検討してみると, 各収量構成要素は葉面積指数と負, 2段目雌穂の平均子実重および着生頻度はR/L比と正の有意な相関を示した(第7表)。以上の結果から, 2段目雌穂の発現は, 相互遮蔽(ヘイ)による群落内部の光条件の悪化や密度の増加に伴う水分競合の影響を最も強く受けるものと考えられた。従って, 多穂型トウモロコシにおいては, 葉が直立で比較的小さく, 高いR/L比を持つ系統が密植条件下において多収を示すものと判断された。
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