抄録
イネの減数分裂期に冷温処理をおこない, 葯の発育にともなう窒素, 燐酸化合物および炭水化物含量の変化をしらべた。処理葯のたんぱく態-N, 酸可溶性-N, リピッド-P, RNA-P, DNA-P, 還元糖およびでんぷん含量は, 処理後3~4日ころまでは正常葯とほぼ同様に増加したが, その後の増加は抑制された。これらの成分の増加抑制は, 冷温処理により小胞子中期ころから始まる花粉充実不良を反映するものである。一方, 冷温処理終了時に, 正常葯含量より無機-Pおよび酸可溶性有機-Pは低下し, 非還元糖は増加していた。これらの成分の低下あるいは増加は, 冷温処理期間中に誘起されたものと考えられる。