稲幼苗時のエチレン生成の品種間差(特に浮稲と非浮稲の間の差)の有無ならびに黄化苗の形態上の差の有無を知るため,バングラデシュ2,インド2,タイ7,インドネシア1,日本1の計13品種およびタイの野生稲2系統を用い,催芽後ゴム栓で密封した試験管中で,暗黒下30℃8日間培養し,ガスクロマトグラフによるエチレンの定量ならびに黄化苗の形態の測定と解析を行った. 浮稲と非浮稲の間にはエチレンの生成量に顕著な差が認められなかったが,非浮稲の1品種, Nam Sagui 19は他の品種より明らかにエチレン生成が多く注目された. この品種は,タイ農業局およびIRRIにおいて冠水抵抗性品種として知られるものである. 15品種,各10苗形質のデータから主成分分析法を用い, 苗形態を総合特性値により要約した場合に,浮稲と非浮稲の違いがどのように把えられるかを調べたところ,第1成分であるサイズファクター(厳密にはサイズファクターとは言えないが)によってではなく,第2成分によって,その違いがよく把えられることがわかった. 根数が多く,根長が長く,鞘葉の長いものほど,第2成分が大きくなる関係にあり,非浮稲ほどこの成分スコアが大きい傾向が認められた.