抄録
グレインソルガムの生長と窒素吸収パターンを明らかにするとともに,その生産性におよばす窒素施用の影響を調査した. 本試験ではグレインソルガム(交雑種,Hazera 726)を5段階の異なる窒素条件下(培地中窒素濃度,7.5,44,88,220および440ppm,ただし窒素吸収パターンを調べる試験では88ppm濃度を供試)で水耕栽培した. その結果,下記のことが明らかとなった. 1. 植物体新鮮重は生育が進むにつれて完熟期まで急激に増加するが,出穂から乳熟期にかけて一時的に増加速度が低下することが認められた. また,植物体の全窒素含量はいずれの部位においても令の進行に伴って低下するが,培地中窒素濃度が高いものほど高い値を示すことが収穫期に観察された. 生育に伴う窒素の吸収パターンは上記の植物体新鮮重とほぼ同一の傾向を示しており,グレインソルガムが生育過程中に2つの窒素要求の高い時期をもち,その時期は急激な茎葉の繁茂をおこす栄養生長期と子実の肥大期であることが認められた. 2. 植物体の生育量や子実収量は培地中窒素濃度440ppmにおいて最も高かったが,植物体や子実に吸収された窒素量は上記の濃度よりも高い濃度条件下で育てたものの方が高かった. 植物体乾物量に対する子実収量および植物体全窒素量に対する子実窒素量の比率によって示される子実の生産効率および子実窒素の生産効率はいずれも培地中窒素濃度17.5~88.0ppmの範囲内において比較的高い値を示していたが,それ以上の窒素濃度条件下では濃度の上昇に伴って低下した. 3. 子実の粗タンパク質含量は培地中窒素濃度の上昇に伴って著しく高まったが,粗脂肪含量などはほとんど培地中窒素濃度の影響を受けなかった. 最高の子実収量を示す培地中窒素濃度は子実の粗タンパク質含量や粗タンパク質収量が最高となる窒素濃度に比べて低いところに位置していた. 本試験の結果より,今後,子実収量と併行して子実の粗タンパク質含量を高める窒素の施用方法の検討が必要であると考えられた.