抄録
穎花を穂上における位置別に, 小胞子初期に冷温処理を行い受精率を調査した.(第1表). 同じく穂上位置別に, 穂首から1次枝梗基部まで(X)および1次枝梗基部から穎花まで(Y)の距離を測定した(第1図), この測定は出穂後(第2表)および小胞子初期(第5表)に行った. 受精率と, 穂首から1次枝梗基部までの距離(X)と1次枝梗基部から穎花までの距離(Y)の加重和, すなわちaX+Y, との間に高い負の相関があった(第5~7図). この係数aは実験により0.35から0.47の間であった. 以上の事実は, 穂上における転流経路(維管束)の長さが穂上位置による穎花の冷温感受性の差異のメカニズムに関与している可能性を示唆する.