主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2022 in 福岡
回次: 1
開催地: 福岡
開催日: 2022/11/26 - 2022/11/27
【はじめに】
ヒトの足にはアーチ構造があり、特に内側縦アーチ(以下、M L A)は足部外在筋や足部内在筋が関与する。近年、超音波画像診断装置(以下、U S)を用いた足部の筋断面積とM L A に相関があるとの報告も散見されるが、足部内在筋の筋輝度を用いた筋の質的影響を報告している研究は渉猟し得なかった。そこで、本研究の目的はUS を用いて、足部内在筋の筋断面積及び筋輝度とM L A の関係を明らかにすることとした。
【対象】
足部に愁訴のない成人男性5名10足(年齢2 4± 1.8 歳)。
【方法】
US はKONICAMINOLTA 社製(SONINAGE HS1)を用い、対象筋を母趾外転筋(以下、AH)、短趾屈筋( 以下、FDB)とした。US 走査は、座位にて舟状骨をランドマークとしてAH とFDB の短軸像を3回計測した。画像は、ImageJ にてFree hand で筋断面積を測定し、8bit gray scale によるヒストグラム解析にて筋輝度を解析した。MLA は、座位・立位時の舟状骨高を足長で除しアーチ高率を求め、またNavicular Drop Test を用い、舟状骨下降量( 以下、ND) を測定した。US 走査よる検者内信頼性を級内相関係数にて求めた。統計処理はR を用い、Pearson の相関係数にて筋断面積及び筋輝度とMLA の関係を検討した。有意水準を危険率5%未満とした。
【結果】
検者内信頼性は、筋断面積はAH(ICC 1,1=0.86)、FDB(ICC 1,1=0.94)、筋輝度はAH(ICC 1,1= 0.94)、FDB(ICC 1,1=0.87)であった。筋断面積の平均は、AH:283.7 ± 37.0mm 2 、FDB:247.3 ± 29.8mm 2 。筋輝度平均は、AH:43.3 ± 12.1、FDB:36.8 ± 10.9。ND は、6.7 ± 2.9mm。アーチ高率は、座位:17.4 ± 1.3%、立位:14.8 ± 1.0%であった。相関関係は、AH 筋断面積と立位アーチ高率(r= 0.71、p=0.02)、FDB 筋断面積とND(r=-0.64、p=0.04)に認められた。筋輝度は各項目で無相関であった。
【考察】
今回、AH 筋断面積は立位アーチ高率とFDB 筋断面積はND との関連性を認め、MLAとAH及びFDBの筋輝度に関連性は認めなかった。Kapandjiは、AH がMLA 全体に及んでおり、アーチ緊張作用を有していると述べており、AH 筋断面積の増加に伴い荷重下におけるMLA の張力が増すことで立位アーチ高率に関連したと考える。また、ND はMLA の柔軟性を表し、FDB は足底腱膜と連結していることからもMLA の剛性に関与していることが考えられ、筋断面積が舟状骨高を担保する一要因になったと考える。これらにより、MLA の有用な指標としてAH とFDB の筋断面積が重要であると推察される。
【結論】
AH とFDB の筋断面積が立位アーチ高率とND に各関係が示され、臨床におけるMLA の有用な指標になり得ると考える。しかし、今回は対象数が少なく、動的な評価も行えていないことから今後も筋輝度との関係性を検討する必要があると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき発表に関する内容説明を実施し、同意を得た。