日本作物学会紀事
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バレイショ塊茎形成初期における内生生長物質の変動
幸田 泰則岡沢 養三
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1983 年 52 巻 4 号 p. 592-597

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抄録
バレイショ塊茎形成の初期におけるふく枝中の内生生長物質の変動と, ふく枝内で生ずる細胞学的変動との関連性について検討を加えた. 1. 伸長中のふく枝先端部のジベレリン様物質含量は比較的高かったが, ふく枝の肥大に伴いその量は急減し, 以降は塊茎形成完了期まで非常に低い値を示した. 2. オーキシン含量は, 全体として大きな変動を示さなかったが, 細胞肥大によって生ずるふく枝肥大の初期に最大のレベルに達した. 3. ブタノール可溶性サイトカイニンの含量は, 伸長中のふく枝先端部では極めて低い値を示したが, ふく枝の肥大に伴いわずかに増加し, その後細胞分裂が活発化するふく枝肥大後期に最大となり, 塊茎形成完了に伴ってわずかな減少をみせた. 4. アブシジン酸様物質の含量は, 伸長中のふく枝先端部では極めて低い値を示したが, ふく枝の肥大に伴い増加しはじめ, 以降急激な増加を続けた. 以上の結果は, ジベレリンはふく枝の伸長を促進することにより肥大を阻害し, オーキシンは細胞肥大によって生ずる初期のふく枝肥大に寄与していることを示すものと思われる. またサイトカイニンは細胞分裂を伴う後期のふく枝肥大を促進し, アブシジン酸はふく枝の伸長を阻止すると共に, 後期においては, 休眠芽の誘導に役立っているものと考えられる.
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