日本作物学会紀事
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インゲンマメの13C-同化産物の分配に及ぽすO3とNO2の単独および混合ガスの影響
岡野 邦夫伊藤 治竹葉 剛清水 明戸塚 績
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1985 年 54 巻 2 号 p. 152-159

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抄録

光化学オキシダントの主成分であるO3(0.2ppm)とNO2(2.0ppm)の混合ガスが, インゲン幼植物の個々の葉からの同化産物の転流・分配に及ぼす影響を, 13Cをトレーサーとして用いて調べた. NO2単独による葉面可視害は認められなかったが, NO2+O3の混合ガスは初生葉に著しいO3型の可視害を引き起した. NO2は同化産物の転流・分配にほとんど影響を与えず, 葉の13CO2固定能をかえって促進したため, 各部位への同化産物の転流量を増大させた. NO2+O3の混合ガスはO3単独以上に葉の13CO2固定を抑制し, その程度は第1本葉より初生葉で大であった. また初生葉からの同化産物の転流を阻害し, 逆に第1本葉からの転流を促進した. さらに新葉や上位茎への同化産物の分配率を高め, 逆に根や下位茎への分配率を低下させた. その結果, 根や下位茎への同化産物の転流量はO3単独以上に減少した. 本実験の結果から, NO2+O3の混合ガスは同化産物の転流・分配に対してO3単独と類似した影響を与えること, 共存するNO2はそれ自身では植物にほとんど悪影響を与えなくとも, O3の毒性を増幅する作用があること, 等が明らかとなった. O3とNO2による相乗効果のメカニズムについて, いくつかの可能性を指摘した.

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