日本作物学会紀事
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作物群落用反射スペクトル解析装置の開発 : 第4報 完熟期の分光反射率測定による水稲穀実収量推定法
芝山 道郎棟方 研
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1986 年 55 巻 1 号 p. 53-59

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抄録

1. 水稲5品種をライシメータで異なる施肥条件下で栽培し, 登熱後期に群落の反射スベクトルを測定した. 測定波長域は460-1,600nmである. 反射率測定後, 供試区は粗もみ収量, 玄米収量, 風乾わら重, 及び地上部乾物重についてサンブリング調査した. 各波長反射率から, 粗もみ収量を推定する重回帰分析を行なった. 自由度調整済重回帰係数 (R*)を指標にして変数増加法によって有効な波長を探索した. その結果, (1) 580, 620, 840,及び1,260nm反射率の線型式で, R<*2>=0.79 (観測数=20)が得られた. この式による予測値は, 0-8OO g/m2以上の広い収量水準の範囲で実測値とよく合致し, 品種の違いによる影響を受けにくいと思われた. (2) 580nm (緑)と1,260mn (中赤外) 反射率は粗もみ収量に対して負の相関を示したが, 620nm (赤)と840nm (近赤外) 反射率は正の相関を示した. 2. 冷害を被り, もみ摺り歩合が様々に低下した水稲もみの反射率を室内・電球光下で本装置によって測定した. もみの充実度合が高くなるに従い, 1,200nm帯の反射が小さくなる様子が見られ, 屋外での測定で粗もみ収量と1,260nm反射率とが負の相関を示したことと現象的に一致した. 3. 1トン上の結果から, 中赤外域の1,200nm付近の反射率が粗もみ収量の推定に有効であることが示唆された. また, 近赤外域のみならず, 緑, 赤色などの可視域スペクトルも, 収穫期水稲の収量推定上, 重要であることがわかった.

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