日本作物学会紀事
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作物群落用反射スペクトル解析装置の開発 : 第3報 可視・近赤外・中赤外域反射率を利用した水稲生体量の各種推定手法の比較
芝山 道郎棟方 研
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1986 年 55 巻 1 号 p. 47-52

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抄録

水稲5品種をライシメータで栽培し, 最高分げつ期から出穂期にわたって, 作物群落用反射スペクトル解析装置により, 群落の分光反射率を測定した測定波長域は460~1,600nmとした. 赤色 (660nm), 近赤外 (840nm), 中赤外 (1,100, 1,200, 1,580nm) 域の各バンド反射率間の各種演算値 (第1表) と地上部乾物量との相関関係を調べた. このうち 1,100, 1,200nmバンドは前報でその有効性を指摘したものである 1,580nm/バンドは、ランドサット (地球資源探査衛星) のセンサーに使われている比較的新しい波長の一部で植生の探査・解析用として期待が持たれている. 回帰分析を行なった結果 (第2表, 第2図a,b,c). 1. 1,100nmと1,200nmバント, または1,580nmと840nmを使った比演算及び差と和の比が, 乾物量と比較的高い相関を示し, 660 nmと840 nmバントを使う演算値よりも明らかに有効と考えられた. 2. 比演算値及び差と和の比は ,単なる2バンド間の差よりも良好な結果を与えた. 3. 近・中赤外バンドの演算値を用いた重回帰分析の結果, 乾物量600~1,300g/m2の範囲でR2=0.52を得た(第3,4表, 第3図). これらの結果により, 野外分光測定によって高い繁茂度の水稲の生体量を推定する上で1,200nm付近, 1,580nm付近のバンドの有効性が確認された. また中赤外域における作物の野外分光研究の重要性が強く示唆された.

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