日本作物学会紀事
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作物群落用反射スペクトル解析装置の開発 : 第7報 野外分光反射測定による水稲窒素量の推定
芝山 道郎秋山 侃
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1986 年 55 巻 4 号 p. 439-445

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抄録
可搬型スペクトロフォトメータ(既報)を用いて水稲14品種の個体群分光反射特性を測定した(前報). 本報告では, このとき得られた波長400~980nmのスペクトルデータと, 葉身・茎・穂の乾燥粉砕物をN-Cアナライザによって分折した窒素含有率データとをつき合わせて相関分折を施すことにより, 水稲窒素量を野外分光測定によって推定することの可能性を検討した. 1. 葉身窒素含有率(LNC), 地上部窒素含有率(TNC), 単位土地面積当たり地上部窒素量(TNA), 同葉身窒素量(LNA), およびLNAの自然対数値の各々について400nmから980nmまで20nm間隔30波長反射係数との相関係数を計算した(第1表). 2. LNAおよびIn(LNA)と赤色~遠赤域反射係数が比較的大きな負の相関関係を示した. LNCとLNAとを較べると, 後者の方が可視域反射係数との相関係数が高く, またTNC, TNAは各波長反射係数との相関係数は極めて低かった. 3. 2ないし3波長反射係数を用いて, ln(LNA)を推定する重回帰モデルを設定し, 30個の波長を総当たり式に調べ, 重相関係数の高かった組み合わせを第2表に示した. 2変数では620nmと760nmが, そして3変数では400nm, 620nm, 880nmの組み合わせで最高の重相関係数(0.855および0.868)が得られた(N=140). データを2分して一方から重回帰モデルの各係数を推定し, この式を残りのデータに適用した. この時の重回帰分折の結果を第3, 4表に各々示す. 実測されたln(LNA)に対する推定値をプロットした図が, 第1, 2図である. 第1図は620nmと720nmを用いた場合で, 第2図は400nm, 620nm, 880nmの3波長を用いた場合を示した. 実測値と推定値間の相関係数は, 各々0.874および0.894で多くの品種の異なる生育時期をこみにした結果としては, かなり精度の高い推定が行われた. 第3図は第1, 2図と同様だが, 重回帰モデルの従属変数として対数をとらないLNAを用いた場合の結果を示した. 高い窒素レベルで推定誤差が大きくなり, 両者の関係が直線的ではないことが判る. 4. 以上の結果より, 赤・紫および近赤外域の波長帯を利用することにより, 野外分光反射係数から水稲葉身の窒素量を非接触計測することが実現の可能性をもつと推察された.
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